娘の遺髪
「AI」アンドロイドの少年が愛を求めて旅をする物語
娘の遺髪からこの話を思い出した
初見の時は息子の歳が近くて少年に重ねてしまい号泣
ラスト近くでお母さんを蘇らせる為DNAが必要だと知ったが彼はとうの昔に亡くなっているお母さんの物を持っていなかった
その時相棒のクマ型アンドロイドが思い出しポケットからお母さんの毛髪を差し出す
たった一日だけの復活だけど彼の為に微笑んでくれるお母さんに愛される幸せな日
夜眠りについたお母さんは二度と目覚める事はない
その横で眠りについた彼の落ちる筈のない電源が落ちそれを見たクマもまた崩れるように倒れ固まる
もし映画のようにこの願いが叶うなら一日でもいいからもう一度会いたい
一日あったら娘と何をしようか
好物を作ってショッピングに行って乗馬もさせてあげたい
娘が眠りについたら一緒にそのまま眠ってしまいたいなんて言ったら息子達に叱られるだろうか
遺髪からそんな想像が溢れてまた泣いた
納棺の時に切った髪とは別にその一年半前に切った髪が一房ある
三年振りに切った髪はとても長くて30センチ程の所で結えてもらいそこから一度切って貰った
その後整えるようにカットしてもらったのだが娘は
美容師さんがつけたワックスやスタイリング剤の香りが美少女の匂いだとはしゃいだ
少し毛先をカールした髪型に嬉しそうに鏡を見て
その足でヘアアイロンを買いに行った
スカートを履かなかった娘が花柄のスカートを翻しすらっとした姿が堪らなく可愛かった
髪は病気の人にカツラを寄付する所に送りたいと思っていたけど何処に送ろうかと思っているうちに遺髪になってしまった
丁度2年前の今頃の出来事
入学式のちょっと前に行った美容院
あの少し肌寒い夕方の
くるっとあの子が回った時のフンワリした美少女の香り
人は忘れる事で生きていけるらしいけど
出来る事なら何もかも見た映像を録画してとっておきたい
まさかこんな日が来るなんて想像もしたくなかった
人は忘れる事で悲しみを癒す
わかっていても何一つ忘れたくない
娘の遺髪は戸棚の奥にしまわれて
いつか私が灰になる時一緒にして欲しいと思った